PS4「ザ・アサインメント」クリア後レビュー① 「サイコブレイクはつまらない」の誤解を解く稀有な名作DLC!【ネタバレ】
前回ついにPS4版サイコブレイクDLC「ザ・アサインメント」のネタバレ攻略日記を書き終えることができました。
これでやっとレビューが書けます。
というわけで今回はサイコブレイクのDLC第一弾「ザ・アサインメント」をクリアした上でこのシナリオを評価していきます。
このシナリオ、またはサイコブレイク自体を未プレイの方がいたら絶対に遊んでいただきたい。
主人公ジュリ・キッドマンの視点が本編の評価を「佳作」から「名作」にまで昇華させる稀有なDLCです。
「サイコブレイクはつまらない」と評価された理由について考える
過去に私は記事で「サイコブレイクは名作になりきれなかった佳作である」という評価を出しました。
未読の方はこちらをどうぞ。
発売前に私を含めこのゲームを期待していた方もたくさんいたことでしょう。
しかし世間的な評価というのはPS4版サイコブレイクの新品価格が1500~2000円程度にまで下がっているというところから察することができます。
要するにあまりいい評価ではなかったと思ったユーザーが多くいた、と言えるでしょう。
しかしこのゲームは万人受けしないワインのように嗜好性の強い作品であるというのは製作したタンゴゲームワークス自身がよく理解していました。
それはディレクターの三上氏自身がインタビューで発言しています。
私が思うにあまり難しいゲームや大衆性の低いゲームをプレイしないいわゆるライト層が多くこのゲームをプレイし、
このゲーム特有のストイックさにストレスを感じマイナス評価をしたのではないでしょうか。
発売前の広告も「バイオハザードの生みの親」「サバイバルホラーの父」などといった触れ込みが多く打ち出されていましたからね。
多少のホラーテイストはありつつも難しいと考えるほどの難易度ではありません。
しかしサイコブレイクはとにかくよく死ぬし難しい。
どちらかと言えば万人受けするような爽快感は少ないと思います。
そのあたりにライトユーザーが求めたものとサイコブレイクが目指したものとのズレが生じたものと考えられます。
求めたものと違うものが提供されるというのはクレームとなります。
それはユーザーが「自分をないがしろにされた」と感じるからです。
その結果、サイコブレイクは低い評価をされたと考えられます。
ですがバイオっさんはこのゲームに対し「佳作」と評しつつも、非常に高く評価しています。
大好きだと言ってもいいでしょう。
雰囲気、空気感、シナリオのセンス、魅力的なキャラクターetc・・・。
三上真司ディレクションの名にふさわしいストイックで手作り感溢れるゲームだったと思います。
しかしサイコブレイク本編には決定的に悪いところがありました。
それはプレーヤーがシナリオに置いてけぼりにされてしまうということ。
主人公のセバスチャンはゲームの舞台であるビーコン精神病院で何がおこなわれたのかについてほとんど無知です。
そして何も内容が分からぬままルヴィクなどの敵キャラに終始翻弄され続け、なんだか分からないままクリアとなってしまうというストーリーでした。
「ストーリーが頭に入ってこない」というのは思いの外デメリットだったようで、
シナリオやキャラに感情移入できない上によく死ぬし、リスタート時のローディングが14~15秒ほど入るというストレスの積み重ねがプレーヤーからサイコブレイクをプレイする楽しみを奪っていったのではないかと私は考えます。
ストーリーが頭に入って来ない理由について私は
「開発側がプレーヤー側の意識というものをないがしろにして自分の作品のアート性、ゲーム性のみに注力してしまったからだ」
と考えていました。
実はこう考えたのにはもうひとつ理由があります。
それは過去に発売された三上氏ディクション作品の「ヴァンキッシュ」プレイ時も同じ感覚を覚えたからです。
爽快感はありつつも終始ストーリーが頭に入ってこない。
シナリオにプレーヤーが置いてけぼりにされている感覚が常に付き纏う。
三上ディレクションのゲームは色彩が薄いという特徴も相まって全体的なイメージものっぺりしているように感じ、正直個人的にあまりいい評価はできませんでした。
そんなヴァンキッシュをプレイした時の感覚がまた蘇ってきたためにサイコブレイクも同様の作りだったのではないかと考えたわけです。
「ここ(シナリオへの没入感不足)さえ解消されていれば間違いなく名作だったのに・・・」
しかし後にそれが大きな誤解であったと思い知らされます。
そのきっかけとなったのがこのDLC「ザ・アサインメント」でした。
「キッドもまた被害者である」という視点が没入感を与える
本編中登場するも終始謎の存在であった秘密組織メビウス。
このDLCの主人公ジュリ・キッドマンはビーコン精神病院で行われている実験などについて全く知らないセバスチャンとは違い、
初めからメビウスの命令でビーコン精神病院に来ています。
このちょっとした視点の違いが私のサイコブレイクの評価を大きく塗り変えることとなりました。
簡単に言うと、本編中のストーリーや出来事が頭に入って来なかったのはセバスチャンの視点で話が進行していたからなので当然のことだったのです。
キッドのシナリオでは当然のことながらキッドの視点でストーリーが進行します。
これまでまったくどんな人物かわからなかったキッド。
そして何か今回の事件のことについて最初から知っている様子。
その程度の情報しかないため、アサインメントプレイ前に私が抱いていた彼女のイメージは
「なんかいけ好かない冷たい女」
程度のものでした。
しかしアサインメントをプレイした後私の彼女に対するイメージは一変。
「いけ好かない女」
から
「がんばれ!と応援したくなるいかにも主人公らしい魅力的キャラ」
へと大きくイメージが変わりました。
それは彼女もまた自らの過去に苦悩し、メビウスに利用されている一人の被害者でしかなかったと分かったから。
そして彼女へのイメージが変わるとともにこの作品への親近感が増し、その結果サイコブレイク全体が非常にユーザー目線を大事に丁寧に作られた作品だったと思えるようになったのです。
親近感はプレーヤーにキャラへの感情移入を促し没入感を与える重要な要素です。
なぜなら親近感を与えることでプレーヤー自身の脳内にキャラクターが生きるからです。
本編で語られなかった「キャラクターの心の動き」が誤解を解く
本編プレイ時にはあまり興味が持てなかった各キャラクターの心の動きに「ザ・アサインメント」は注目させてくれました。
「ザ・アサインメント」では戦闘が殆ど無く、探索がメインとなっています。
ですが、それが逆にプレーヤーをストーリーに集中させる要因になったのではないでしょうか。
このシナリオをやって正直私は感動しました。
「ストーリーや人物描写を少し深く掘り下げただけでこんなにゲーム全体の完成度が増すとは!」
タンゴゲームワークスはユーザーの視点を全くないがしろになどしていなかったのです。
本編ではユーザーがセバスチャンの視点に、そして「ザ・アサインメント」ではキッドの視点により近く立ってストーリーを進められるようにゲームデザインをしていただけなのです。
開発側は決してユーザーの目線を見失ったりなどしていませんでした。
それが分かっただけで私が思うサイコブレイクに足りなかったピースは全て埋まりました。
すべては些細なボタンの掛け違いでしかなかったのです。
そういう意味で「ザ・アサインメント」がサイコブレイク全体を「佳作」から「名作」へと昇華させたと私は考えます。
冒頭でも書きましたが「ザ・アサインメント」を未プレイの方はぜひプレイしていただきたいです。
そしてもしまだサイコブレイク自体をプレイしたことが無い方がいたら本編とセットで必ずプレイしていただきたい。
「1080円は高すぎるのでは」と思うユーザーもいらっしゃるようですがとんでもない!
本編とは全く違うゲームだと考えれば全然安いものです。
映画一本観るくらいの気持ちなら全然元が取れます。
絶対に損はさせません。
日本が世界に誇る「モノ作り」の素晴らしさをあなたはこのゲームから感じることができるでしょう。
次回は「ザ・アサインメント」のレビューと「ザ・コンセクエンス」についてまとめます
いかがでしたでしょうか。
今回はバイオっさんが「ザ・アサインメント」を高く評価した理由について本編の不満などを踏まえてレビューしました。
実際私と同様に「本編より面白いのでは」と感じるプレーヤーも多くいたようです(笑)。
次回はそんな「ザ・アサインメント」の良かった所などについて書きつつ、
次回作「ザ・コンセクエンス」の意味な内容などについて考察してきます。
お楽しみに!
ちなみに更新速度はやや遅いですが現在「ザ・アサインメント」KURAYAMI(真っ暗闇)モードの解説実況プレイを動画サイトにアップしております。
画質の悪さとこのモード特有の「真っ暗闇」なゲーム展開のためもはやサウンドノベルと化しています(笑)。
しかしフェチズム全開で実況しておりますのでよろしければこのブログと合わせてご覧ください。
※4月13日更新
レビュー②の記事をアップしましたのでぜひご覧ください。