【レビュー】ザ・アートオブサイコブレイクを評価 DLCを買ってこれを買わない理由はない!考察も捗るこの本ならではの「視点」とは?
今回は先日購入したTHE ART OF PSYCHOBREAK(ザ・アートオブサイコブレイク)をレビューします。
ザ・アサインメントとザ・コンセクエンスを買うくらいのサイコブレイク好きなら絶対満足できるその内容と魅力、そしてこの本でしか見られない視点についてご紹介していきます。
まさにアートブック(芸術図鑑)さながらのクオリティ。
220ページに渡る美麗オールカラー写真。
サイコブレイクの世界観をより良く知るための設定資料とコメント。
私はこの本を買って大変満足しています。
ザ・アートオブサイコブレイクはどんな内容?
3780円というやや高額な価格設定からかこれまであまり突っ込んだレビューが出ていないこの本。
せっかくなので私がご紹介します。
まずこの本はどんな内容となっているのか。
一番初めに今作ディレクターであり、タンゴゲームワークス設立者でもある三上真司氏によるイントロダクションから始まり、キャラやコンセプトアート、背景、アイテムなどを美麗フルカラー写真で掲載。
最後にコンセプトアートを手がけた中村育美氏によるコメントで締めくくられています。
目次はこんな感じ。
英語では分かりにくいので日本語で補足します。
00.イントロダクション(三上氏による解説)
01.キャラクター
02.敵する者(敵キャラクター)
03.舞台(背景やコンセプトアートなど)
04.小道具(アイテムやゲーム中に登場するPOPなど)
05.広告用画像
以上が主な内容となっています。
この本の面白い所はほぼ全てのキャラクターやクリーチャーにコンセプトアーティスト中村育美氏によるコメントが掲載されているということ。
このコメントと読むとサイコブレイクがこれまでいかに試行錯誤してきたか、そして熱意あるスタッフによって丁寧に作られてきたのかがヒシヒシと伝わってきます。
当初はSFチックな内容で検討されていたこと。
各キャラクターへの深い思い入れが優れた世界観を創りだしたこと。
数限りない没アイディアが存在したこと。
ゲーム中では語りきれないキャラクターの裏設定
etc...
そんなゲームをしただけでは理解できない舞台裏での努力をこの本を読むことで理解することができます。
そしてそんな見に見えない細かなピースが一つ一つ積み重なってサイコブレイクの繊細でダークな世界観を生み出したのだと思うと私は非常に胸が熱くなりました。
タンゴゲームワークスがサイコブレイクにかけた思いというのは私が思っていたよりもずっとずっと深く、熱いものだと知りました。
メインキャラのボツ案だけでも膨大なパターンが載っています。
SFチックなものから現代風のものまで非常に様々なバージョンがあり(それでも掲載されているのはほんの一部とのことですが)、手探りで進んでいたことがよく分かります。
そんな膨大なアイディアの中で敢えて自らの出世作「バイオハザード」と同じサバイバルホラーというジャンルを選んだ三上氏の勇気は尊敬に値しますし、恐らくその方向性に従い共に行動したスタッフ陣も同様の勇気を持ってゲーム作りに取り組んだのでしょう。
この本でも書かれていますが
「新しいゲーム会社が新作ゲームを作るというのがいかに難しいことか」
ということをこの本は教えてくれます。
絵の中にちょっとしたお遊び要素が含まれているのも見ていて楽しいですよ。
(クリーチャーの虫歯を発見している所とか(笑))
私が良いと思った所
では個人的にこの本を読んで良いと思った点をいくつか。
・コンセプトアーティスト中村育美氏のコメント
先述した通り、キャラクターや背景などほぼ全ての項目に中村氏によるコメントが添えられていますがこれが実に興味深い。
現在のデザインに至るまでの経緯やディレクター始め他のスタッフとのやりとり、そして随所に見せる中村氏の強いこだわり。
そんなゲーム中では決して語られない裏話、裏設定などを読めるのはこの本の大きな醍醐味の一つでしょう。
また、没ネタなどもコメント付きで紹介されると
「もしこれが実装されていたらどうなっただろう」
と想像する楽しみが出てきます。
・造形物をじっくり堪能できる
ゲーム中ではゆっくり見ることができないクリーチャーや武器などもこの本ならじっくり堪能できます。
この本は発色が印刷品質が高いのでとても綺麗です。
ゲーム中には気づかなかった発見がみつかるはずです。
ゲーム中にもサイコブレイクからは「日本人ならではのきめ細やかさ」を感じていましたが、アートオブサイコブレイクを読んだらさらに強く感じるようになりました。
決して海外の会社をマネしない。
自分たちにしかできないゲーム作りをする。
という強い意志を感じ、私も同じ日本人として誇りに思いました。
日本のゲーム作りは決して海外に負けないはずです。
そして私がこの本で最も面白いなと感じたのは以下の点です。
・背景やコンセプトアートを俯瞰して見れる
サイコブレイクをプレイ中の視点というのは基本的に操作キャラの目線しかありません。
つまりセバスチャンならセバスチャンの視点、キッドならキッドの視点でカメラが、そしてストーリーが動きます。
これによってプレーヤーがセバスチャンと同じ体験をできるというのが狙いだと思いますが、
操作キャラ自身が自分の身の回りに何が起きているのかを理解していないため当然プレーヤーも同じ気持ちとなります。
ではどうやったら理解しやすくなるのか。
それはストーリーを俯瞰して見ることです。
その「俯瞰してみる視点」がこのアートブックオブサイコブレイクにはあるのです。
サイコブレイクの世界を一歩引いて見渡せる貴重な資料
この本では各ステージの全体図やコンセプトアートが掲載されています。
これがあるだけでサイコブレイクの世界観をより深く知ることができます。
ビーコン精神病院がいかにクリムゾン市の中で異常な雰囲気を持った存在であるか
STEM内の世界はルヴィクのどんな思いで作られているのか
サイコブレイクがただのゲームではなくアート性としてもかなり注力していたこと
ゲームをプレイしただけでは決して分からないサイコブレイク全体の雰囲気を美しい写真と共に味わうことができます。
お世辞ではなく本当にこの本は美術本だと言えます。
ため息が出るくらい美しい絵がたくさんあるのです。
絵画だと言っても過言ではないでしょう。
これを見ているだけで非常に満足できます。
ついつい何度も眺めてはあれこれ妄想してしまう魅力がこの本にはあるのです。
昨年すでに発売されていた海外版THE ART OF THE EVIL WITHINはハードカバーだったという話ですからそれはもう大変な重厚感だったのだろうと思います。
本当にただのゲーム本というジャンルにしておくのがもったいないですね。
「これを考え描いた方々は凄い」
と改めて思いました。
ただただ尊敬するばかりです。
この本は「映画のパンフレット」のような存在である
私にとってサイコブレイクとは
本編がゲーム
DLCはストーリーを補足する映画
という区切りになっています。
「ではこのアートオブサイコブレイクは一体どんな存在なのだろう」と考えた時、一番しっくりきたのは
この本は映画のパンフレットのような存在
であるということでした。
映画館で映画を観てその作品を気に入った人はパンフレットを購入します。
そしてそれを見ながらより作品への理解を深めようとするでしょう。
ザ・アートオブサイコブレイクは本編をプレイして「面白くない」と判断した人にとっては残念ながらあまり価値の無い本です。
ですがもしあなたが本編をプレイして「サイコブレイクをもっと知りたい」と考えた人なら、
そしてDLCを購入してプレイするくらいのファンであったならばこの本はあなたの期待を裏切らない貴重な資料となるでしょう。
価格だけを見たら少し高価かと思います。
しかし私は決してこの価格は高くない。
むしろ安い。
と考えています。
出版側は決して儲けようと思ってこの本を出版しているわけではありません。
金額以上の価値がこの本にはあるのです。
私はゲーム本編、DLC、アートオブサイコブレイクすべてがサイコブレイクという世界を表すのに欠かせない存在だと考えます。
この本を買って更に私はサイコブレイクが好きになりました。
[Amazon]THE ART OF PSYCHO BREAKザ・アートオブサイコブレイク
唯一惜しい点はアサインメント・コンセクエンスの資料がほぼ入っていないというところですね。
あちらの世界観も大変素晴らしいので電子書籍版でいいからぜひ出版してほしいものです。